OEM契約の注意点とは?

OEM契約書は、企業が自社ブランドで売り出す製品の製造を委託する契約です。製造内容や、商標の使用等についてしっかりと規定することが重要です。ここでは、OEM契約書に記載すべき条項と、注意点について説明します。 

OEM契約とは

自社ブランド製品を他社に製造委託することをOEMといいます。そのため、自社の商標を付した商品の製造を委託することになるので、あくまで取引の内容は製造のみとなります。

ライセンス契約との違い

OEM契約と似た契約形態としてライセンス契約というものがありますが、こちらの場合には自社の商標を付した商品を製造委託し、さらにそれの販売まで許可するパターンの契約となります。

業務委託契約との違い

業務委託契約とは、製品の製造を委託する契約全般を指しています。そのため、OEM契約もこの製造委託契約の一種に含まれます。製造委託契約の中にはODM契約も含まれます。OEMとは異なり、製品の企画・開発、場合によってはマーケティング戦略立案まで対応するケースもあります。

OEM契約をするメリット

OEM契約をする際の委託者のメリットとしては3つあります。

  1. 製品の供給量を拡大できる
    自社の製造能力に限界がある場合、製造の委託により供給量を増やすことができるようになります。また、自社に製造の設備や開発スキルがない場合も、1から投資して育成する時間とコストを割くことなく、短期間で商品の供給ができるようになります。
  2. 製造にかかるコストを削減できる
    新たな設備投資や人員増加をせずに商品を製造できるようになるため、大幅なコスト削減をすることができます。また、すでに製造の能力がある会社に大きなロットで商品の製造を委託することで、コスト
  3. 製造以外の業務に力を注ぐことができる
    商品の販売戦略の立案、マーケティング、販売網の拡充などの販売につなげるための業務に集中することができるようになります。

OEM契約をするデメリット

  1. 製品の品質の管理が難しい
    製造過程を監視することができないため、不具合が発生したり正しい流れで商品が製造されないなどの問題が発生し、品質が落ちるリスクがあります。
  2. 製造ノウハウが流出するリスクがある
    技術情報の漏えいやほかの目的での利用を禁止する上等をOEM契約に入れていても、受託者がそれを守らずに他社製品や自社製品を製造したり情報を流出させる可能性があるため、取引をするメーカーの選定は非常に重要です。
  3. 自社の開発力・技術力が向上しない
    自社で製造を行わなくなると技術力の向上が見込めないというデメリットがあります。

OEM契約書の記載事項

OEMの契約書には製造するものの内容や仕様、納期、検査方法、商標の内容や製品への表示方法など、最低限記載すべき事項がたくさんあります。漏れがあると後々トラブルになる可能性もありますので、重要な項目は必ず記載することが重要です。

取引内容

製造する商品の内容・サイズ・材料・製造方法などの取引内容を記載します。仕様が複雑だったり複数の商品を製造する場合には、契約書とは別に製品仕様書に詳細を記載する形をとることが多いです。

商標

OEMでは、受託者が委託者の商標をつけた製品を製造するため、「今回だけは特別に商標をつかえる旨」を定める必要があります。具体的には、使用する商標を特定し、使用方法を指定、さらに外の製品には使用してはならない旨や、商標を付した商品を受託者が第三者に譲渡、販売、貸与できないことも記載していきます。

発注期日

契約段階で発注日が明確に決まっている場合は記載することが多いです。しかし、継続的な委託で発注が複数回にわたる場合は別途発注日を個別契約で定めると記載します。

最小ロット・最小発注数

単発の発注ではなく継続的な発注を予定している契約の場合、リピート注文の最低発注数を定めます。

納入期日

納入期日については別途個別契約書や発注書にて記載することが多いため、その旨を記載します。

受入検査の方法

納品された製品の受入検査の方法も記載が必要です。受入検査には抜き取り検査や外装検査のみの場合などがありますが、複雑な検査が必要な場合には検査手順書の形でその方法を別途定めることもあります。
納入から検査完了までの期日、検査結果の通知方法、通知がない場合合格とみなす、不合格だった場合の受託者の対応方法などについてあらかじめ明記しておきます。製品の品質に合わせて適切な内容を記載しましょう。

代金支払方法

支払方法については別途個別契約に記載する場合もありますが、請求書の発行日の末日など一般的な支払日を記載することがほとんどです。振込手数料をどちらが負担するかも記載するようにしましょう。
下請法が適用されるケースについては、納入日から60日以内に支払う必要がありますのでご注意ください。

品質保証・契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)

製造した製品に不具合がある場合、どのような対応をするかは契約書に必ず記載が必要です。
受入検査で不合格が出たときに、追加で納品する・代替品を納品するなど、どのように対処するかを定めます。他に代金の減額や、損害賠償請求できる、と定める場合もあります。また、不具合品を引き取る方法や、引き取る代金をどちらが負担するかについても明記することがあります。

受入検査では発見できなかった不具合がのちに発見された場合には契約不適合責任の問題が発生します。この場合は契約不適合への対応の期日を納品日基準で1年とする場合や、発見時から1年とする場合、検査終了時を基準に1年とする場合など、相互協議が必要となる部分になります。不具合製品でも委託者が認めた場合には納入することもあります。
下請法の適用がある場合はこれらに関係なく返品は6か月以内となります。

秘密保持

技術やノウハウを相互に共有することで商品開発をするのがOEM契約です。そのため多くの秘密情報が交わされます。
どのような情報を秘密情報とするかの定義は双方ですり合わせが必要です。また、それらの秘密情報の開示を認めないこと、漏えいしないこと、目的外の使用を禁止すること、漏えいした場合の対処法や損害賠償についても定めます。

契約解除事由

基本的にすべての契約に記載される項目です。多くの場合は手形の不渡りが出た、破産申し立てをした、などの信用不安の場合を記載します。
他にも契約違反があり是正される見込みがない場合や、重大な背信行為があった時、反社会的勢力の排除条項に反したときなどについて定めます。

また、契約解除の申し立てにより解除できる旨を記載することもあります。その場合は解除希望日の3~6か月前までに通知するなどと記載します。

期限の利益喪失の責任

支払期限が先の債務をすぐに支払わなければなることを期限の利益損失の責任といいます。期限の利益を喪失させられる条件としては、破産や差し押さえなどの契約解除条項の内容を定めることが多いです。

契約有効期間

1回の発注で終わらず継続的に取引する場合には契約期間を記載します。通常1~3年程度で記載されます。契約期間満了後も取引が継続する場合に備え、自動更新についても記載します。その場合自動更新をしない場合の通知方法と通知の期日についても記載します。

再委託の可否

再委託とは、OEMで委託した先がさらに別の会社に委託をすることです。再委託をされると委託者からするとさらに管理が難しくなるため事前の許可が必要になります。また、再委託先がどこかを通知させたりします。再委託先について通知する場合でも、再委託先が起こした問題は受託者が一切の責任を負うなどの内容についても記載するほうがベターでしょう。

OEM契約締結時の注意点

OEM契約においては、まずは、製造する製品の仕様や条件をしっかり定めることが重要です。
また、商標の使用方法についても、もれなく定める必要があります。

そのほか、OEM契約は委託者と受託者の立場が不均衡になりやすい、という注意点があります。委託者側は、取引に下請法が適用される場合には、契約内容が下請法に違反していないか確認しましょう。

また、継続的に取引する場合、取引内容が変わり、契約書と一致しなくなることもありますので、随時契約内容の修正がないかを気にしておくことも大切です。